第8回・スーパーボクシング漫画

 前回の第7回「四角いジャングル」から少し間が開いてしまいましたが、今回の娯楽天国では前回書ききれなかったボクシング漫画「リングにかけろ」について書いてみようと思います。作者は「セイントセイヤ」で有名な車田正美で、今から20年以上前に週刊少年ジャンプで連載されていました。
 前回までの作品(「あしたのジョー」、「はじめの一歩」)が「正統派ボクシング漫画」なら、リングにかけろは「スーパーボクシング漫画」という評価が当てはまります。
                             
 当初は、弱虫な主人公・高嶺竜児が亡き父親と同じボクシングの道を姉の菊と共に歩むというストーリーでした。上京した2人の前に現れた生涯のライバルとなる剣崎順が登場し、竜児と対戦。当時、まだ小学生同士なのに高等テクニック(「ロープ・ア・ドープ」や「ヒット・アンド・アウェイ」)の応酬を見せ、本格的な正統派路線を期待させた。
同時に、セコンドとして天才的な才能を発揮する菊とボクサーとして応える竜児に「あしたのジョー」のジョーと丹下段平の姿がダブらせる事が出来たのだった。
                             
 だが、この路線が一つのパンチによって突如として大きく変更された。それは、竜児が開発した「ブーメラン・フック」という必殺パンチである。パンチ自体は強烈なフックなのだが、一撃必殺の絶対的なパンチの登場が後の展開を決定づけたといえる。そう、超人ボクサー同士による必殺パンチの激突である。(後にパンチ名を叫べば相手が遥か彼方に吹っ飛んでいくという黄金パターンが誕生する)
 全国大会(チャンピオン・カーニバル)の開催に便乗して後に「黄金の日本ジュニア」と言われる竜児(主役)、剣崎(ライバル)、石松(ギャグ担当)、支那虎(いぶし銀)、河合(ビジュアル系担当)といった主要メンバーが勢ぞろい。当然のように必殺パンチを持っている天才ボクサー達の登場に名セコンド・菊の存在意義と理論が消滅してしまい、リアリティとの決別は決定化したのであった。
                              
 この後、ストーリーは団体戦モードに突入。前述した「黄金の日本ジュニア」がチームを組み、世界の強豪と激突するという図式になり、日米決戦、謎の拳闘集団・影道との戦いを経て、世界大会という大舞台に物語は推移して行くのだった。
 世界の強豪とのバトルでも「黄金の日本ジュニア」の強さは際立っていた。(チーム結成以来、全員が全勝)だが、順調に勝ち進むに連れて相手も強敵化し、準々決勝で対戦したフランスチームの謎のパンチ(実はかまいたち)に剣崎が「全員、敗北するかもしれねぇ」とビビリ発言をしたものの、カラクリが判明した後は楽勝で勝ちを重ね、大将のナポレオンも竜児の新必殺パンチ「ブーメラン・スクエアー」が炸裂し遂に準決勝に進出した。
                              
 準決勝の相手はドイツ。なぜか、ドイツチームの選手名はナOスの幹部の名前がズラッと並んでいて危険な匂いが漂います。試合は、意味不明な数学公式が連発される異常な試合が繰り返され、なんだかんだ日本が4連勝。試合は、剣崎とスコルピオンの試合を向かえます。ここまで「天才的な強さ」という抽象的なものだけで必殺パンチのなかった剣崎だったのですが、なぜか電圧室で開発したという「ギャラクティカ・マグナム」を初披露。その半端じゃない威力は、風圧で遥か彼方の壁に穴を開けるもので、直撃を受けたスコルピオンは窓を破り会場外にダイブしてしまいました。対人間用というよりも、対ピッコロ大魔王用といえるパンチの出現です。
                              
 迎えた決勝戦。相手は「神の国」ギリシアです。この試合では、毎試合毎に勝った日本チームの選手が死んだような演出が続出し、更に全勝で試合終了になった時に「長い間 応援ありがとう・・・。黄金の日本Jrここに世界制覇完全勝利達成!!」と最終回モード全快になるのですが、しばらくしてから全員復活し普通に物語は続きます・・・。
 次なる相手は、ギリシア12神。世界大会決勝で戦ったギリシアチームが2軍という驚愕の事実が判明しますが、読者は誰もが「それなら、最初から12神が世界大会に出ろや!」と突っ込みをいれた事でしょう。
 相手は12人もいるので、今回は「黄金の日本ジュニア」に影道総帥やスコルピオンらのライバルが加わった「世界連合ジュニア」となって試合しますが、この試合でも1試合玉砕が繰り返されていきます。

 このギリシア12神は、黄金のヘリコプターで派手に登場しますが、大半が自分達のリーダー(ゼウス)の姿を見た事がないという、いい加減極まりない集団でした。
 必殺パンチも「ムーンライト・ヘブン」や「ゴッド・イリュージョン」等のカッコイイ横文字を組み合わせただけの意味不明なパンチなかりで、結局は屈辱の12連敗で敗北してしまいます。

 この後、物語は当初の路線に立ち返り「黄金の日本ジュニア」は解散。そして、剣崎は剣崎財閥の力でデビュー戦が世界タイトルマッチというあり得ない展開になります。
 しかも、挑戦するバンタム・クラスは、世界ランカー1位から10位までは全てチャンピオン・ジーザスの息の掛かった者(ジーザスと10人の使徒)で締められているという、もう勝手にしてくれという無法状態。
 天才・剣崎も流石に苦戦(試合中に1度死亡)しますが、ジーザスに見事に勝利し、今度はチャンピオンとして宿命のライバル・竜児の挑戦を受けます。

 遂に実現した対決ですが、これまでの激闘で既に肉体は死んだ状態になっている2人は、文字通り命を賭けた最後の対決に望みます。
 凄まじい必殺パンチの応酬が見られますが、普通に食らえば一撃KOになってしまいますので、審判にぶつかったり、ロープを掴んで衝撃を緩和したりなどの小細工を弄しながら物語はクライマックスを迎えるのです・・・。

 長々と語ってきましたが、この「リングにかけろ」の続編「リングにかけろ2」が現在「スーパージャンプ」で連載していて、そちらでは新世代の熱い戦いが読むことが出来ます。(ドラ息子達が数多く出ています)
 機会があれば、まとめて読んでみて下さい。その独特の世界を充分に堪能することが出来ると思います。面白い事、間違いないです!


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